イラストレーター夫婦がいく「世界にたった一つの指輪づくり」

イラストレーター夫婦がいく「世界にたった一つの指輪づくり」

夫婦にとって『指輪』とは、大きな愛をカタチにしたものであり、その誓いの証であり、ただのアクセサリーでは片付けられないとても大切なものです。「給料三ヶ月分」などという言葉があるように、多くの夫婦はその存在に大きな価値を感じているはず。ではそんな指輪を、想いを込めて手づくりし、贈り合ったらどんなに素敵でしょうか......。

そこで今回、何組かのご夫婦に声をかけました。

「世界にたった一つの指輪を、お互いに贈りませんか?」

この呼びかけに手を挙げてくれたのは、こちらの夫婦。

イラストレーターの田中寛崇さんとHALKAさんご夫婦 イラストレーターの田中寛崇さんと、同じくイラストレーターのHALKAさん

名刺 いただいた名刺にご自身のイラストが

今回お二人に体験していただくのはアートクレイシルバー。通称『銀粘土』です。粘土のように成形していくため、シルバーの中でも比較的初心者でも自由にデザインできる技法とのこと。
しかも、ご夫婦揃ってイラストレーターさんだなんて......そのクオリティーに期待が高まります。

指輪づくり体験を指導者:越智先生 今回の指輪づくり体験を指導してくださる越智先生

まずは大まかなデザインを決める

銀粘土に触れる前に、指輪のだいたいのデザインを決め、シルエットを決定します。

――デザインどうされますか?

HALKAさん:彼は幾何模様が好きなので、その模様がキレイに出るようにちょっと太めのデザインがいいかなと。どうだろう?

寛崇さん:そのほうが面積が出るからいいかもね。妻は鳥が好きで、自分の作品にもよくモチーフとして使っているんですよ。なので、僕は鳥の指輪を作ります。

先生:それはちょっと難しそうね。初心者にはちょっと繊細な表現は難易度が高いかもしれませんよ。

寛崇さん:そうなんですか?......でも、頑張ってみます。

HALKAさん:お願いします!(笑)

粘土を袋から出して、指輪の土台をつくる

先生:この中に指輪のもととなる「銀粘土」が入っています。銀粘土は乾燥に弱いですから、袋から出したらテキパキ進めていきましょう!

二人:はい!!!

このように棒状に伸ばして、だいたいの太さをつくっていきます。
太くしすぎると短くなってしまい、輪っかにしたときの連結が弱くなってしまいますし、細すぎると強度が足りません。すでに繊細な作業が始まっています。

そこから均等な厚さに伸ばしたら、いらないところを切断し、まっすぐにカタチを整えていきます。

それを専用の棒に巻きつけ、いらない部分を切り落とします。この棒は、場所で細さが違っていて、指輪のサイズによって巻きつける場所を変え、作りたい大きさの輪っかに仕上げることができるのです。
ここではまだ粘土の状態なので、棒に巻きつけたままドライヤーで強制乾燥させます。数分後、余分な水分が飛んで固くなったのがこちら。

そこから均等な厚さに伸ばしたら、いらないところを切断し、まっすぐにカタチを整えていきます。

これで指輪の土台が完成です。ここから段差や出っ張りを削って、キレイにしていきます。

――黙々と作業されていますが、普段ご自宅でもこんな感じでお仕事されてるんですか?

寛崇さん:そうですね。お互い作業部屋は別で持ってるんですけど、PCのいらない作業とかなら場所を選ばないので、リビングでしゃべりながら仕事したりします。

下絵を描き、折れないように慎重に掘っていく

簡単に折れやすくなっている状態なので、掘るときは一箇所に力が加わらないよう慎重に進めます。

HALKA:え? どうやって掘るの?

寛崇さん:折れないように指を中に入れて、強く握り過ぎないようにね。

寛崇さん:鳥の目ってこんな感じでいいの?

HALKAさん:そうそう、ここにこういう感じで2つ......

奥さまは手先の器用な旦那さまに掘り方を聞き、旦那さまは鳥に詳しい奥さまに鳥の描き方を聞き......仲睦まじく助け合っています。

あ............

HALKAさん:折れちゃったー!!!!!!(笑)

先生:ありゃ?! 溝を深く掘り過ぎちゃったね。ちょっと先生がなんとかします。

HALKAさん:お願いします......。

先生の職人技による修復作業でなんとか復活

削り終わったら、電気炉で焼いてシルバーに

削り終わったら、電気炉で焼いていきます。ここで銀以外のノリが焼けて、銀の粉たちが結びつき、シルバーになります。
しかし、焼き上がってすぐはまだ銀色ではなく、こんな白い色をしています。

初めは粗い金ブラシでこすっていきます。
ブラシをかけ終わったら、磨きヘラで鏡面にします。

ここでHALKAさんも、少し遅れてブラシがけの工程へ。

寛崇さん:そのブラシ硬いから、指を擦らないように気をつけて。

先の工程を行く旦那さまが、奥さまに優しくアドバイスします。

硫黄液(いおうえき)で燻して黒くする

表面が平らになったら、次は燻していきます。硫黄液に浸して数秒後......

「真っ黒!」

これを専用の銀磨きをつけたクロスで磨いていきます。

寛崇さん:おぉ~、掘った模様が出てきた。

HALKAさん:ほんとだ?! すごい!!

HALKAさんの作品も、燻して表面をクロスで拭くことで、幾何模様が浮かび上がってきました。

ようやく指輪が完成、そして指輪の交換

柔らかい粘土からこねて、HALKAさんにハプニングがありながらも完成した指輪がこちら!

先生から「絶対にこんな複雑なデザインは失敗すると思った(笑)。初心者でここまで仕上げられる人は今まで見たことない!」と大絶賛された旦那さまの作品。奥さまの一番好きな鳥「シマエナガ」を見事に描いています。さすがイラストレーターさん!

では、お互いを想って作った指輪を交換します。
まずは旦那さまから奥さまへ。

そして、奥さまから旦那さまへ。

つくってみた感想

――初めての指輪づくりということでしたが、率直に感想はいかがですか?

寛崇さん:すごく楽しかったです。最初はただの粘土だったのに、こうやって指輪になるというのは不思議な感覚ですね。妻の好きなエナガが上手く表現できてよかったです。

――HALKAさんはいかがですか?

HALKAさん:私も楽しかったです! とっても楽しかったんですけど......彼にこんなに可愛い鳥の指輪を作ってもらったのに、私は途中でポキポキ折っちゃうし、ガタガタな指輪になっちゃって申し訳ないです。ごめんね?

寛崇さん:指にハマれば指輪だから。大丈夫だよ、ありがとう。

奥さまは失敗するたびに、「あげる指輪なのにごめんね」と声をかけ、そんな奥さまに「全然大丈夫だよ、それも手作りの味だから」と旦那さまが優しく返していました。

指輪を作る工程でお互いの大切さや愛情を再確認し、指輪を見るたびにそのことが思い出されるはず。皆さんもぜひ一度、お互いに指輪を作り合ってみませんか?

<取材協力>

  • 田中寛崇(イラストレーター)

https://twitter.com/tanakahirotaka?lang=ja

  • HALKA(イラストレーター)

https://twitter.com/halka797

  • (株)工房エンプレス 四谷教室(http://www.kobo-empress.com/)

東京都新宿区左門町6-7 鯉江ビル902

所要時間:1時間半~

レッスン時間:HPよりご確認ください。

料金:1時間/2000円 +材料費

お問い合わせ:03-5361-0018

Concent編集部所属のプランナー兼ライター。さまざまな職種の人々へのインタビューを得意とし、どんな大物であろうとおそれず切り込む命知らず。

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